6.9.15

Le Voyage à Nantes 2015

前回紹介した「レ・ランデヴー・ドゥ・レルドル(Les RDV de l’Erdre)に続いて、ナントの夏のイベントの様子をお届けします。

毎年夏の始まりと同時に開催される大規模なアートイベントル・ヴォワィヤージュ・ア・ナント(Le Voyage à Nantes)

2012年に第一回目が開催されて以来、毎年7月の始め〜8月いっぱい、夏休み期間中ナントの街の至る所にアート作品が設置され、各ギャラリーや美術館では特別展が開催されるなど、毎回盛りだくさんのプログラム。

ナントの街が一望できるブルターニュタワー上階のカフェLe Nid、個性的な展示と併設アート書店の豊富な品揃えが人気のHAB Galerieなどは、このプロジェクトをきっかけに誕生し、今ではナントの人たちに愛される不動の人気スポットとなりました。

ナントのランドマーク的存在である巨大黄色クレーンにぶらさがる「地球」。建築オフィスDetroit Architectesと地元アーティストBruno Peinadoのコラボによって実現した「On va marcher sur la lune」という作品の一部で、クレーンの足下には飛んで遊べる大きな「月のトランポリン」があります。

とにかくイベント期間中は毎日何かしら催し事があるので、わたしのように夏休みの予定がぜ〜んぜん埋まってなくても落ち込む必要なし!
ナントの街中をぶらぶら〜と歩くだけで、小さな旅ができてしまうのです。

道にひかれた蛍光グリーンのラインに沿って歩いて行けば、全てのアート作品に辿り着けるので、ナントに初めて来る人たちも安心して散策を楽しめます。

噂を聞きつけて、毎年フランス各地方や海外からも観光にくる人たちがたくさん!

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光栄なことに今年はわたしも地元クリエイターの一人としてJ'aime the Voyage(ジェム・ザ・ヴォワィヤージュ)というプロジェクトに選んでいただきました。

ル・ヴォワィヤージュ・ア・ナント(Le Voyage à Nantes) を応援する地元のアーティストやお店がそれぞれ「Voyage」仕様の商品や作品を提案してイベントを盛り上げるという主旨の企画で、わたしは紙を折って作るピンホールカメラ「ステノリガミ(Sténorigami)」のVoyageバージョンを制作し、ナント市内の3つのブティックで置かせてもらいました。

イベントのパンフレット/マップに自分の名前が掲載されるのはやっぱりうれしい。



お城の正面入り口前にあるナント市観光オフィスのショーウィンドウ内にも商品を飾ってもらっています。



こんな立派に置いてもらって、「ステノリガミ(Sténorigami)」もどことなく誇らしげ。
ありがとうございましたー!

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蛍光グリーンのラインに導かれながら街で出会ったアート作品の一部をずらーっと紹介しつつ、今年の「Voyage」を簡単におさらいしたいと思います。

まずは、「ナントのグルメ街」と呼ばれるブッフェ地区の広場に突如現れた、一見ジェットコースター?と見まがうこの巨大オブジェ。
フランス人アーティストBaptiste Debombourgの「Stellar」という作品です。


どの角度から見ても迫力満点。誰も乗っていないのに「キャ〜〜!」という叫び声が今にも聞こえてきそうな臨場感!


椅子は全て固定されているはずなのに、猛スピードで動いているように見えてくるから不思議。


実はこの作品には、夏の間中何度も何度も目にしていたのにも関わらず、わたしがとうとう展示最終日まで気づかなかった驚きポイントがあるんです!


お気づきですか?

そう、実は各色の椅子が辿り着く先にあるバーとレストランのテラスには、お客様用に同形・同色の椅子が並べられているではあ〜りませんか!!

広場にいる鳩ですら二ヶ月前からとうに気づいていたであろうこーんな面白くて分かりやすいトリックに今の今まで気づかなかったなんて…わたしの目は節穴かー!


こうやって引きで見るとかなりシュール。
そんなの気にせず普通に席について会話を楽しむ人たちがとてもいい感じです。


最終日にこんな素晴らしい発見ができてよかった!

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道順的には逆戻りですが、グララン・オペラ内のインスタレーション作品「Spectacula」もなかなか素敵でした。
ナントとロワール・アトランティック県を代表する劇団Le Grand Tの客員アーティストとしても活躍するAurélien Boryによるもの。

オペラ正面玄関には作品名でもある「SPECTACULA」の大きな文字が掲げられています。
これが夜になると雷のようにピカピカ力ゴロゴロ光って面白いんです。
これは、映画館やシアターで演目名を表示する電光掲示板?に見立てているそう。


実はこの作品のメインは劇場の中にあるのですが、中の様子は残念ながら暗すぎてうまく写真にはおさめられませんでした。
簡単に言うと、劇場の光る客席がランダムにその灯りを消していく…というもの。
真っ暗な空間にふわーっと浮かび上がる客席が幻想的で、静かな夏の夜にうっすらと光る蛍の群を思わせる、なんとも上品な作品でした。

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道のりに戻って、お次はLe Lieu Uniqueの2階の展示スペースで開催されていたDiane Landryの「Chevalier de la résignation infinie」。

この何ともひねくれた作品名は「限りない甘受の騎士」と日本語に訳してみてもいまいち(むしろ訳すと余計に)「?」なのですが、リサイクルを作品制作の軸にしているアーティストが世界の資源危機の一つである「飲料水の減少」にスポットを当てた作品です。

水ではなく砂の入った計237本のペットボトルが時計を思わせるノンストップで回り続ける機械に取り付けられています。

ボトルの中を行き来する砂のさらさらと心地よい音と、白く光りながら規則正しく回り続ける大小様々な光の輪が、外の暑さと時間を忘れさせるような不思議で美しい空間を生み出していました。
暗闇にくるくると回り続ける姿は、音と色をなくした花火みたい。


誰も注意していないのに、展示室にいる全員が耳をすませて静か〜に鑑賞していて、作品が放つ静けさの力を感じました。

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建物の外、国鉄駅となりのサン・フェリックス運河にはなんとも派手〜な船が浮かんでいます。

「Asie Riderz」(映画の『Easy Rider』と「Asie=アジア」をかけている)と名付けられたこの船は、去年の「ル・ヴォワィヤージュ・ア・ナント(Le Voyage à Nantes)」で多く注目を浴びた「Villa Ocupada」を手がけたアート&ヒッピホップ集団Pick Up Productionが主催したもの。

作品のテーマがアジアなだけに日本からもライブペイント界で活躍する3組のアーティストが招待され、フランス、ドイツ、インド、中国のアーティストと共に大きなペニッシュ(屋根つき船)全体をオリジナルのペイントで埋め尽くしました。


船の外側に取り付けられた特に目を引くこのゴテゴテの彫刻作品は、ナント出身アーティストGrolouによるもので、実際に日本を訪れたことがあるという彼は、本来は二匹別々である狛犬の「阿(あ)」と「吽(うん)」を一体の裏表で表現したそうです。


窓の少ない船内は蒸し風呂状態で、汗をぬぐうのに忙しくてゆっくり作品を堪能することができなかったけど(この中で何日もこもってペイントしていたアーティストのみなさん、すごい。お疲れさまでした!)奇妙で力強い世界観がとても面白かった。

以下のリンクからプロジェクトに参加したアーティストたちのインタビュー映像が見れます。 船内での制作の様子も見れるので気になった方はぜひご覧になってください。
Vidéos "Asie Riderz"

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また道のりを少し飛んで、冒頭で紹介した「Stella」の目の前に作られたのが、奇妙な形のサッカー場。その名も「Feydball」。
「Foot ball=サッカー」と、この広場の元々の名前である「Feydeau」 をかけ合わせたダジャレ風のタイトル。

ぐわーんと見事に湾曲した競技場。
こんな変なコートで本当にサッカーができるのか?と疑ってしまいますが、 実はコートの横に設置されているこれまた湾曲した鏡の中を見ると、通常の長方形のかたちをした競技場が姿を現す!という仕掛けがされているんです。 

広場で遊ぶ子どもたち(もちろん大人も)はコートの奇妙な湾曲具合なんてまーったく気にもかけず、ひたすらサッカーに夢中になっていました。楽しければそれでいいんだもんね。 

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道なりに進むとブルターニュ公爵城とその立派なお堀が見えてきます。
天気のいい日はピクニックをする人たちでいっぱいになる緑がとても気持ちいい場所。

2014年のル・ヴォワィヤージュ・ア・ナント(Le Voyage à Nantes)のために作られたアメリカ人アーティストPatrick Doughertyの作品「Fit For A Queen」は、子どもたちの好奇心をかき立てる巨大な植物迷路! 


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最後にわたしが今年特に気に入った作品、ナント国立建築学校の屋上に作られた特設スケートパーク「Le Skate Ô Drome」。
スケートボードやBMXなどのストリート系スポーツを支援する地元組合Unity 4 Rideの提案によって実現しました。


パステル調のポップな色合いがかなりツボ。


全部木で出来ていて、その立派な構造を眺めるのもなかなか楽しいです。


年季の入ったこだわりのスケートボードでワイルドに滑りまくるお兄さんたちに混じって、小学校中学年くらいのキックボード3人組がやってきました。

彼らのパフォーマンスが思った以上にハイレベルでびっくり!
空中でハンドルをくるくる回す難易度高めの技も涼しい顔でやってのけちゃう、すご〜。
その場にいた人みんな釘付け。

将来は世界で活躍するプロのキックボーダーになるかも? 


ヘルメットに装着した小型カメラで自分のスケーティングを撮影する子も!
最近のキッズはわたしなんかよりずっとハイテクだ〜。


屋上なので空がよく見える。

わたしはスケボーもキックボードもアイススケートもスキーも「滑る系」全般苦手だけど、こんな素敵なスケートパークですいすい滑れたらきっと気持ちいいんだろうな〜。

スケートしながら空まで飛んで行けちゃいそうな爽快な空間でした。


見るものが多すぎて全部は紹介できないのが残念。
イベントのためなら一日中ノンストップで歩けるわたしでも期間中のマップ完全制覇はできなかった…。

今年のル・ヴォワィヤージュ・ア・ナント(Le Voyage à Nantes)は8月30日で終了し、すでに街から姿を消してしまった作品も多々ありますが、植物公園や美術館、博物館では期間を少し延長して、まだ見ることのできる作品や展示もあります。

食事やドリンクが楽しめるロワール川沿いのカンティーヌも9月19日まで営業。
ちなみに19日の夜にはクロージングパーティーが予定されているそう。

来年もさらにパワーアップしたイベントになることを期待しています!

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